Q21.高知大学底質浄化実験

※NHKニュース番組放映 , 高知大学 西島教授


微生物による汚濁養殖漁場浄化の試み

『バイオコロニー』撒布による底質改善試験報告書

(高知大学農学博士 西島 敏隆教授)
本浄化剤菌を養殖漁場の浄化に使用し、海水中における増殖特性及び蛋白質、炭水化物の分解能を評価した。
培養試験の結果によると、本浄化剤細菌は低水温の5℃では増殖速度が極端に低下するが、増殖は15℃~37℃で良好であり、37℃で最も増殖速度が大きい事が分かった。
○ 浄化剤細菌の増殖特性と有機物分解活性
底質改良剤『バイオコロニー』を養殖漁場の浄化剤として使用し、本浄化剤細菌が海水汚泥における自浄作用を亢進する事が可能かどうかを評価するために、浄化剤細菌と養殖漁場(高知県浦の内湾)の底泥細菌の蛋白質分解活性(ロイシンアミノペプチダ-ゼ活性)デンプン型炭水化物(α-グルコシダ-ゼ活性)並びにセルロ-ス型炭水化物活性(β-グルコシダ-ゼ活性)を比較した。
その結果、蛋白質分解最大速度は培養温度に強く依存し、25℃における単位湿泥あたりの分解速度は7℃のそれに比べて浄化剤細菌では約5倍大きかった。
また、同一湿度において単位湿泥あたりの蛋白質分解速度を比較すると、25℃で1.4倍、5℃では5.2倍程度浄化剤細菌の活性が底泥細菌のそれを上回った。
B subtilis は特にロイシンアミノペプチダ-ゼ活性で表される蛋白質分解活性が高く、広い温度範囲で養殖漁場底泥が持つ蛋白質分解活生により明らかに高い。
養殖漁場において残餌として負荷される汚濁物質には蛋白質を多量に含むことから、本浄化剤を底泥に移植すれば低水温期から高水温期の周年にわたって、自浄作用を高めることが可能と思われる。
以上のように、B subtilis を主剤とする浄化剤は、特に蛋白質分解能に優れその活性は漁場の底泥細菌群に比べてかなり高く、本浄化剤を底泥に撒布する事によって底質改善が可能であると考えられる。
また、B subtilis を添加した養殖餌料の給餌は飼育魚の成長を促進させ養殖による自家汚染物質として水中に負荷される残餌及び糞の分解促進にも効果が認められた。
(底質改良剤 『バイオコロニー』微生物による養殖漁場浄化の試み】より掲載)

 

■微生物添加で成長促進

養殖にともなって漁場環境に負荷される他の汚染物質として養殖魚が排泄する糞がある。
魚類養殖の場合、摂餌量の約1/4が成長(増重分)に使用され、残りは糞や排泄物として水中に負荷されると推定される。
ここでは、微生物を養殖魚の餌に添加して給餌し、排泄される糞の分解を促進させる試みについて述べる。
浄化剤としてB.subtilisをフスマに付着させたものを用い、ハマチ養魚を約90日間飼育して、定期的に試験魚を取り上げ、飼育魚の成長を追跡すると共に、糞を採取してその蛋白質及び炭水化物分解活性を測定した。
ハマチの餌として配合飼料及び真鰯を1:1の割合で含むモイストペレットを用い、これをフスマに付着タイプの微生物を1~3%の割合で添加して給餌した。

高知大学 西島 敏隆博士 (微生物による汚濁養殖漁場浄化の試み。本文から抜粋)

写真は西島敏隆博士よりご提供

浄化剤を給餌したハマチ幼魚の成長は、本文図3に記載のとおり、飼育開始20日頃から浄化剤を添加しない対象区の成長を上回り、飼育終了時には浄化剤細菌添加区の魚体重は対象区に比べて上回り、飼育終了時には浄化剤細菌添加区の魚体重は対象区に比べて約9,4%重くなった。(上の写真)
このことから、本浄化細菌を餌とともにハマチに投与しても成長に悪影響を与えることなく、飼育の比較的初期にハマチの成長が著しく促進され初期の差が飼育終期まで持続ずることがわかった。
現在多くの飼料生産会社で使用され、養殖魚類の発育促進効果と歩留まりアップに使用されています。

2019年05月04日